今から十年くらい前までは会社が本部道場からそれほど遠くないところにあったので、仕事の帰りによく稽古に行っていました。
特にストレスが溜まると1時間稽古をするだけでスッキリするので仕事が終われば道場に直行ということも多かったと思います。
最後の時間は19時~20時なのでサラリーマンが多くいました。
若い人から年配まで。
忘れられない事があったのは今から30年くらい前だと思います。
仕事が終わるのが遅くなり稽古開始時間に間に合わず、19時過ぎに道場に入りました。
本部道場は稽古は100畳くらいあるマットの上で二人一組になって稽古をするのですが、開始時間に遅れてやってきた人は相手が来るまで、マットの後ろの板の間で待つのが慣例になっています。
その日仕事が終わって道場についたときは19時をまわっていました。
着替えてから道場に入ると私と同じくらいの(日本人の平均的体格)の外人が板の間で待っていました。
早速マットの部分に入りました。
お辞儀をして顔を合わせた瞬間、相手の異様な雰囲気に驚きました。
普通は「これから一緒に稽古をしましょう」という雰囲気なのですが、その時の相手は「殺す」といわんばかりの殺気を放っていました。
その時の技は「突き」なのか「正面打ち」なのかは忘れましたが、相手はいきなりかかってきました。(雰囲気的には“襲ってきた”というように感じました)
そのとき、私自身どのように動いたのかは全く意識していませんでしたが、相手は「ドーン」という大きな音をたてて目の前に倒れました。
多分私は相手に合わせて手で相手に触れながら後ろにひいたような感じだったのではないかと後で思いました。
倒れたときの音が大きかったのでその時の指導者が慌ててやって来て、「乱暴なことはしないように」と注意されました。
少しの間相手の方は板の間で座って休んでいたのですが、また稽古をやりたいと誘われ、マットの上に移動しました。
そしてお互いが正面で向き合うと、また「殺気」を帯びて襲ってこようとするような雰囲気になりました。
私は驚き「ストップ」といって、稽古を止め、ゆっくりと稽古をしたいからもっと「リラックス」してくれと話しました。
かなりぎこちない動きになりましたが、何とか稽古になりました。
稽古が終わって、どこで習っているのか尋ねたら、多分イスラエルかヨルダンだと話していたと思います。
彼の話では当時中東戦争というのがあり、徴兵制があって戦争に行っていたが、従軍期間が過ぎたので以前習った合気道の稽古をしたくて日本に来たとのことでした。
(私のつたない英語でどれだけ通じたかは分かりませんが、大体そんなことを話していました)
おそらく戦争という極限状態での体験が体に染みついていて、目の前の人間がかかってくるというように感じたのではないかと思います。
戦闘状態とは格闘技やスポーツのように「相手を見ながらどのような技をかけるか」といった駆け引きのようなものは全く無用で、ただ目の前の敵を倒しに行くだけ・・・というようなものなのでしょう。
今でもその時の光景が眼の中にやきついています。
0コメント