合気道は雑誌について書いたように試合がないのでなかなかストーリーになりづらいようで、本として出ているものは多くありません。
合気道に最も影響を与えた武術である「大東流合気術」の達人武田惣角については津本陽氏の「鬼の冠」という本があります。明治時代から昭和まで大東流を教授するだけで生きてきた人の一代記で殆どノンフィクションだそうです。
ひとりで数十人を相手に乱闘を繰り広げたり、警察や裁判所の用心棒をしたりして一生を闘いに生きた凄絶な人生に驚きます。
そしてその武田惣角から教えを受け技を伝えた大東流の達人と言われた佐川幸義氏について書かれた「透明な力」という本があります。腕に自信のある武道家が次々と訪れたらしいのですが、誰もがその技量に感嘆したとされています。
この本はその弟子である数学者の木村達雄氏が佐川氏が存命中に書いたものです。主に佐川先生からの聞き書きといった内容ですが、昔の武道社会の様子や佐川氏の鍛錬などについての記述も多く面白い本です。示唆に富むところが多く、他の武道家にもよく読まれており版を重ねています。(合気道を長くやっている人の間ではかなり有名です)
同じ佐川氏の門人で物理学者の保江邦夫という人が10年くらい前に出した「武道の達人」「武道VS物理学」などの本は合気道や大東流合気術で人が倒れる論理について物理学的に説明しようとしています。それなりに納得出来る説明もありますが、この人の著作の中にはかなりオカルト的なものもあります(私の感想です)。といっても変な宗教に入りなさいというのではありませんが・・・ひいきの引き倒しの様な感じです。
ただ、この人の体験談や文体が面白いせいか、本はそれなりに売れていますし、YOU TUBEにも多くの映像がUPされていますので見ることが出来ます。
木村氏、保江氏共に同世代で学者仲間ということもあり親しいそうですが、理系の学者ならではの武術に対する思い込みがあるようです。
合気道は試合になじまないので結局「凄い人は凄い」というようにしか書かれていませんでしたが、彼らのおかげで何故「凄い」のかについて理解できる部分もあるかと思います。
尚、彼らは共に合気道の山口先生の弟子でしたが、開祖がなくなってからは他の合気道の師範では物足りなかったらしく、大東流合気術の佐川氏の教えを受けるようになったようです。
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