足の動き

毎回稽古の初めに足の動かしかたを中心に体捌きの練習をしている。

何故毎回そのような単調でつまらない（？）稽古をしているのかというと、それが体捌きの基本だからである。

ひとは動くときは通常、「かかと」で着地をし、「つま先」で地面を押して、その反発力で動く。

①「かかと」、②「つま先」と二回、地面に接し、その間で重心を「かかと」→「つま先」と移して動くのが通常の歩行動作である。

そして「かかと」から「つま先」に重心を移動させるとき、重心の位置はその間にあり定まっていない。そして体自体は殆ど動いていない。

相手からすると攻撃しやすい態勢になる。

武術としては極めて問題がある。

もし重心をいつもコントロール出来れば、咄嗟の判断で動ける。

すなわち常につま先と一緒に重心を移動させること雅できればかなり俊敏に動ける。

他のスポーツを見るとそのような動きになっている。

特に激しい動きが要求される、サッカーやバスケットボール、野球の守備、アメフトの選手の動きを見てみると常にかかとを浮かしている。

それはすぐに次の態勢に入れるようにしているためだ。

ならば彼らが武術としての動きができるかというとそれはまた異なる。

彼らの態勢は目の前のボールを狙って前傾姿勢をとっている。

少なくともボールは殴りかかって来ることはない。

しかし、武術は目の前の人間は自分にかかってくる、ということを前提としている。

だからそのような前傾姿勢はかなり危険だ。

そういった態勢で相手と殴りあうのがボクシングというスポーツだ。

ボクシングでは、自分の拳や腕で体をガードし、体を揺らすことでクリーンヒットを避けることが出来る。

これは殴りあいというボクシングのルールを前提とし、競技者が体を鍛えているからである。

しかしそれでは前方向の人間しか相手に出来ず、相手が複数のとき対応できない。

またボクシングのように体重による階級性があるから同じ態勢で殴り合うことが許されるのだ。

しかし、護身術として考えるなら、相手は自分より大きくて力の強いものにも対処できなければならない。また相手が常に自分の正面にいるわけではない。

そこで要求されるのが、相手の攻撃を咄嗟に避け、逃げたり、相手を制圧したりする技術だ。

即ち、つま先で立って重心をその上で維持しながら前後左右に動くことが必要になる。ここが、スポーツと異なるところだ。

そしてそれを可能にするためには体捌きの練習が必要となる。

それが、現在やっている、「かかと」→「つま先」の重心移動がなくてすぐに動けるようにかかとを少し浮かし、体の中心線を保って、つま先で動く訓練なのだ。