最近の学生はかなり大人しくなっていますが、20年くらい前まではまだかなり変った学生が多くいました。
その頃合気会の本部道場に通っていたとき、道場の入り口に学生服を着た学生が10人近くがズラ~と並んでいました。
それはどこかの大学の体育会の合気道部だと思います。
そのころの大学の「体育会」は、大学に学問の研究や勉強の為に来ているのではなく、スポーツ?というより「なんらかの運動をする特異な集団」でした。
極端な例が40年位前に漫画で有名になった「花の応援団」のような通常の人間としてのルールを無視した傍若無人な連中がいました。
彼らの行動は漫画になるくらいですから普通ではありません。
服装は学生服ですが、ラッパズボンを穿いたり、学生服の裏に変った刺繍をしたりと、学生服でなければ殆ど暴走族のような感覚の連中です。
そして彼らは先輩・後輩関係の規律を何よりも重んじていました。
例えば先輩がタバコを口に咥えると後輩はポケットからマッチを出して、先輩の前にひざまずき火をつける・・・ということを当たり前にようにやっていました。
(キャバレーのホステスでもここまではしません)
そして先輩がなにか言うと、ただ「オッス」というだけでした。
本部道場の前でそのような連中が列をなして先輩が来るのを待っていました。
やがて先輩が来ると、一斉に「オッス」と大きな声で挨拶するので、外人がびっくりしていました。
私もとても嫌な気分で道場に入りました。
やがて稽古になると、そんな連中も普通の稽古生と一緒に稽古をし始めました。
あちこちで「失礼します」と大きな声をだして挨拶をする声が聞こえました。
丁寧なのはいいですが、合気道の稽古にはなじみません。
そのときの師範も困ったような顔をしていました。
私の相手は偶々その学生でした。
当時私は40歳くらいでしたが、多分上級生なのでしょう、いきなり私の前に手を出しました。
本部道場で稽古をするときは、最初に上手な方が先に手を出し、下手な方がそれを持ち、そして受けを取るというのが慣習になっていました。
当時3段になっていましたので、一瞬「何だ、こいつは」と思いましたが、下級生の手前、格好つけたのでしょう。
それでその学生の手を持って受けを取りました。
といっても素直に受けを取ったわけではありません。少し力を入れて持ちました。相手は顔を真っ赤にして技をかけていましたので、可愛そうなので少しは協力して倒れてあげました。
私が技をかけるときは遠慮なくやりましたので、相手の学生は頭を畳みにぶつけそうになりました。(頭をぶつける程強くはやりません)
何回か稽古をしていると、その学生はフラフラになったので、可愛そうになり、それからは手を抜きましたが、学生は必死になって相手をしていました。
後輩の手前途中でやめるということは出来なかったのでしょう。
1時間の稽古が終わったときは、まったくヨレヨレになって立っているのもやっとのような状態でした。
最後はさすがに自分の実力がわかったのでしょう「ありがとうございました」と丁寧にお辞儀をしました。
今でもその時のことを思い出すとおかしくなります。
何が言いたいのかというと、合気道は試合がないので「先輩」の言うとおりやっていては上達しませんという事です。
特に大学では先輩―後輩の関係が強いと先輩の言うとおり倒れてあげないと怒られますから尚更です。
そして一旦そのようなパターン化された「筋肉運動」が身についてしまうと、それを変えるのはなかなか難しいです。
その時の学生はおそらく殆ど毎日稽古をし、3,4年過ぎていたのでしょうが、普通の初段より下手だったように思えました。
重要なのは、常に自分の技は「効いているのか、力づくではないか」と自問自答し、どうすれば良いかを模索することです。
本部道場に行くと、色々な人がいますので面白い経験も出来ますのでおすすめします。
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