井上尚弥についての記事がネットに溢れている。
それは自分が打たれずにほんの僅かな動きで相手を倒した、という他のボクシングの試合とはかなり異なったものだったからだろう。
通常のボクシングでは双方が殴りあい、そのうちタイミングよくあたったパンチで相手が倒れるというケースが多い。
時には、明日のジョーのように「真っ白に、灰のようになるまで燃え尽きる」という状態の闘いをする者もいる。
そのような闘いは、昔は「鶏のけんか」といっていたが、井上尚弥のボクシングはまったく違っていた。
相手との質的な差が目立った。
どこが違うかというと、井上は腰を中心に動いている。
サッカーのメッシや野球の長島茂夫のように常に体が腰を中心としてすばやくいいポジションに移動している。
どのような稽古をしていたのかネットで調べると、一般的なボクサーのトレーニング以外に自動車を押すというトレーニングをしていたらしい。
これは体全体、特に腰を鍛えるのに役立つものといえる。
合気道は常に腰を意識して稽古をしなければならないし、多くの技がそれにとって意味があるように思える。
合気道のような型稽古は武道としては畳の上の水練のようにいう人がいるが、そうではない。
型稽古だからこそ体を作ることが出来るのだ。
試合中心の武道では体を作ることよりも試合に勝つことに目がいってしまう。
それでは腰を作ることは困難だ。
武道の練習として、蹴ったり、叩いたり、時には背筋や胸の筋肉を強くするトレーニングをしているのをよく見る。
それは武道というよりスポーツの一環としてのもののように見える。
そのようなスポーツではそれなりにプラスになるのかもしれないが、私には昔「巨人の星」というスポ根漫画で選手にうさぎ跳びをさせているのとあまり変わらないように思える。
井上尚弥のボクシングが相手との圧倒的な違いを見せたのも、体、特に腰を作った上での稽古があったからだと思う。
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