今回は合気道の話
最近意識的に座り技をやっています。
・・・今時畳の上に正座で座ることは殆どなく、ましてそんな姿勢で誰かが襲ってくるということなどあり得ない・・・のに何故座り技をやるのか?・・・というのが素直な疑問だと思います。
私が合気道を始めた今から40年くらい前も随分座り技をやらされました。
私自身幼い頃は畳の生活が普通で、特に田舎の高知では当たり前でした。
昔は水洗トイレでなくバキュームカーといわれる車が排泄物を取りに来る時代です。
ですから、トイレも西洋式の座った姿勢ではなく、足を開いて腰をおろして両足で踏ん張るという姿勢でした。長くやっていると足が痺れました。
そんな時代ですから座り技も「日本古来の武道だからあるのだろう」と思っていました。
しかし座り技は今も外国でもやります。
彼らが何故こんな訳もわからない事をやるんだということを聞いてこないのが不思議です。
そこで座り技にどのような意味があるのか・・・という事です。
簡単に言うと
一つは足の指から腰を通して背中、腕といった<力を使う線=気>を作るためです。
もうひとつは、腰が動くようにするためです。
具体的に言うと現代人は腰が堅いので柔らかくしなければ合気道の動きにはならないからです。正確には重心が揺れ動くからです。
実感をもてない人が殆どだと思いますが、私からすると、初心者から中級者(多分2,3段レベル)までの人は左右の腰がひとつの塊になって動いているように感じます。
「感じます」というのは目で見たわけではないのでそういう表現になりますが、私が相手をしていて感じるのです。
腰というものは右足と左足に繋がっています。
右足に重心を乗せたとき右側の腰だけが反応すればいいのですが、右側の腰と左側の腰がひと塊になって動くと重心がぶれてしまうのです。
もう少しわかりやすく説明すると、右足を出したとき、腰がひと塊になっていると左側の腰も一緒に右足につられて動いてしまいます。
極端にいうと、昔の遊びの「けんけんぱ」という遊びのような動きになってしまいます。
そこでは片足に重心がきてしまうため、「居つく」という状態になり、次の動作にスムーズに移れなくなります。普通に歩いている人からすると、問題なく歩けているのでは・・・と思うのでしょうが、「武道」をやっている人間からすると重心が揺れて見えます。
それで何がまずいかというと、相手の攻撃を捌けないのです。相手とぶつかり力のぶつかりあいになってしまいます。
そこで左右の腰がひと塊でなく、それぞれの足に連動して動くようになるために座り技が必要となります。
そして腰がひと塊でなく左右にわかれて動くようになると武道では「腰が割れる」と言います。
そして相手の動きに合わせるようになれば体捌きが出来るようになります。
養神館では機動隊に指導していますが、この座り技を徹底してやらせるそうで、稽古の帰りは這うように歩くほど大変だそうです。
座り技はそれだけ大切な稽古で、それを重視した塩田館長は慧眼だったのでしょう。
そしてこの「腰を割る」という動きは相撲でも大変重視しており、「股割り」といわれる稽古になっていて、他にもバレエや社交ダンスなどでも重視されています。
野球のイチローも打席に立つ前にいつもやっています。
それ故、座り技はとても大切な稽古なのです。
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